最近の裁判例 平成27年10月2日東京地判
平成27年10月2日東京地判
貸付けた先の会社とは別の会社への貸金請求が認められた事案
ざっくりした事案は以下のとおり。
A社がB社に3000万円貸付。
B社の経営が悪化。
B社の取締役が、休眠会社を利用してC社を立ち上げる。
A社はC社に貸金返還請求
裁判所「CはAに貸金を返還しましょう」
BとCは別法人なので、AはCに請求できないのが原則です。
しかし、どう考えても実態は同じだろうと思われる場合は、請求は認められるべきです。
このような場合の措置として
会社法22条1項を使用する
法人格否認の法理を使用する
などの方法がありますが、本件は、前者の場合の裁判例です。
争点は、2つ。①新会社C社を立ち上げたことが事業譲渡といえるのか、②標章の続用が、「商号」の続用といえるのか。
本件では、いずれも肯定して、請求を認めています。
AとCは、本店の所在地や法人の目的が同一であり、従業員の一部、顧客の一部も引き継いでいました。
また、旧会社であるB社のブランド力や、B社と会社のロゴが酷似していたこと、顧客への挨拶状も考慮要素されており、結論として妥当です。
感覚的には、旧会社のブランド力を新会社にも利用しようとしている場合には、旧会社の債務も引き継ぐとの判断がされるように思います。
メリットだけ引き継ぐことは認めないということでしょう。
債務者側としては、新たに事業をするのであれば、旧会社のメリットだけを利用しているのではないか、との行動は避けるようにしなければなりません。
会社を新たに設立して業務を開始しようとしているところに、意図しない旧会社の負債を請求されると事業に重大な支障が生じます。
債権者側としては、専ら証拠集めが重要になります。商号や登記はすぐに分かりますが、従業員の雇用関係、顧客の引き継ぎの有無や挨拶状などは、会社外から容易に判明するものではありません。
日頃から業界の横のつながりを大事にして情報を集められるような環境にしておくことが必要です。