最近の裁判例 グーグルに対する削除命令の取消し
平成28年(ラ)192号 平成28年7月12日東京高決
グーグルに対して検索結果を削除せよとの命令が、東京高裁で取り消されました(削除命令の決定)
ざっくりした事案は以下のとおりです。
Xが児童買春で逮捕→罰金刑→納付
3年後 グーグルでXを検索すると逮捕等の情報がヒット
Xがグーグルに対して検索結果がヒットしないように請求
取り消した理由として、刑の言い渡しの効力はまだ失われていないことが挙げられています。
本件は罰金を納付しているので、既に刑の執行は終了しています。
しかし、裁判所は、刑の執行が終了しているか否かよりも、言い渡しの効力が失われているか否かを重視しているようです。
取り消した理由として、検索しても逮捕等の情報に直ちにたどり着かないことが挙げられています。
本件では逮捕等の情報がヒットするといっても2400件中49件であり、上位には表示されていない事案です。
98%は同姓同名の者の別の情報が表示されており、49件であれば、個別に削除の対応をすることが不可能ともいえません。
さらに、検索結果の削除は個別の書き込みの削除比べて影響が大きいことも、取り消した理由に挙げられています。電子掲示板には逮捕等の情報とは無関係の書き込みが多数あるので、検索結果を削除するとそれらの書き込み全てが検索できなくなってしまうことを重視しているようです。
しかし、この点については、やや知る権利を過大視しているように思います。逮捕等の情報とは無関係の書き込みがあるのであれば、逮捕等の情報と無関係のキーワードで検索した場合、その電子掲示板は検索結果にヒットするので、その掲示板へのアクセスを事実上不可能にするとまでは言えないのではないでしょうか。
3つの決定理由のうち、1つについては疑問が残る裁判例です。
今後、最高裁の判断や本案の判断が明らかになると思われますが、現時点では、罰金刑の納付から5年経過していたり(刑法34条)、執行猶予期間が経過していれば(刑法27条)、刑の言い渡しが効力を失うので、削除の可能性が高くなるといえるでしょう。
また、検索結果が数百件以上あり、容易に逮捕等の情報にたどり着く事案であれば、削除が認められる可能性が高くるといえるでしょう。