最近の裁判例 平成27年2月18日東京地決
真の株主が誰かが争いになった事例
ざっくりした事案は以下のとおり。
Yは、株式会社
Xは、代表取締役
昭和28年Y設立 株主はAとBで各150株ずつ所有
平成元年 6000株新たに発行 お金を出したのはBだけど、株の名義はX
平成24年 X解任。
X2解任決議が無効と主張
お金を出したのはBですが、株の名義はX。6000株の株主は誰かが争点となりました。
裁判所の判断は、Bが株主。
誰が株主かの判断は、実質的な引受人が誰なのかで判断されます。具体的には、誰がお金を出したのか、株主名簿、名義貸しをする理由、利益配当が誰に帰属していたのか、株主総会の議決権の行使状況等を総合考慮します。
一番重要視されるのは、誰がお金を出したのかという点と、株主名簿です。
株主名簿については、公証人役場で確定日付を得るだけで信用性が格段に上がります。また、お金の出捐については、銀行口座を介する方が、争いになった場合の備えになります。
まずは、株主名簿の作成と、出捐の証拠を残しておくことが最低限のリスク管理となります。
さらに、利益配当を真の株主に配当していたことや、株主総会決議の議決権の行使状況を、記録として残しておくと、より丁寧な対応になります。
つまり、株主として実質的に活動をしていた証拠を残しておくということです。
実際に株主が誰であるかが争いになるまで、数十年経過することも珍しくありません。
概ね10年経過すると、銀行のデータが消えていたりしますし、株主名簿も、20年以上経過すれば信用性が下がってしまいますが、利益配当や総会決議であれば、直近の活動の証拠として、信用性が高くなります。
1人株主の場合や、同族会社の場合は、株主総会決議を長年していないという場合がありますが、争いになった場合に、何も証拠がないという事態になりかねません。
本件では、新株発行から20年以上経過して争いになっています。お金を出捐したのはBであることに当事者に争いがなかった事案なので、株主はBになりましたが、出捐者に争いがあったならば、結論はかわっていたかもしれません。